インプラントについて
~QOLの向上~
2009年1月19日、朝日新聞の太田啓之記者の取材を受けて私のインプラントに対する考えをお話しました。
私の意を端的にうまくまとめていただいた取材記事が朝日新聞に掲載されましたので、どうぞご一読ください。
朝日新聞「あなたの安心 中高年の歯のケア」(2009/1/31)
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治療の目的
我々歯科医の役割は、問題を抱えて来院された患者さんを、 出来るだけ早く元の状態に戻して上げることです。
問題点としては、痛み、腫れ、物が噛めない、口が開かない、話しづらい、口臭、歯並び、 口元が気になる、将来的に歯が無くなり咀嚼不能になるのではとの不安感等々があります。 特に高齢者では、「噛めない=生命の維持への不安」を訴える方が多いです。
その問題点を解決するために、口腔外科治療、歯周治療、歯根治療、矯正治療、 インプラント治療等の基本治療があります。それらをベースとして、 人工の歯を作成し外観もより美しくし、QOL(生活の質)を高めて快適な毎日を送って頂くのが最終目的です。
「インプラント=最高の治療」に潜む危険性
どんな治療過程をたどっても、最終的に正しく噛めない状態では何の価値もありません。
最初にインプラントありき的な診療姿勢やインプラントの利点のみを強調した宣伝は如何なものか。
噛み合せは、顎関節と相関関係にあり、その患者さん本来の噛み合せと僅かなズレがあれば、 顎関節症の予備軍を作っているようなものです。
そのズレは、症例によっては数ミクロンから数十ミクロンのレベルで、患者さんは気付かないか、 気付いたとしても時間と共に慣れてしまいます。
しかし違和感は無くても、ズレによる生体への衝撃が消滅するわけでは有りません。
野球の投手が肘や肩の関節に無理な投げ方をし続けて、投手生命が絶たれた話をよく聞きます。 歯の場合も全く同じです。発症の時期は、個人の免疫力の差に左右されます。
インプラントは諸刃の剣であり、その人の顎の動きに調和しなければ、 どんなに完璧に埋められたインプラントであっても生体を破壊し長期経過は望めません。
天然の歯の場合は、時として衝撃を吸収する防御システムが働く場合もありますが、 インプラントには、有りません。