マイクロスコープ
マイクロスコープ(顕微鏡)
16世紀に発明された顕微鏡は、人類に大いなる福音をもたらしました。
顕微鏡は、そこにあるのに肉眼では、よく見えない物を見せてくれます。
歯がエナメル質、象牙質、セメント質から成り立っていて、単に硬い無構造の物体でないことを、顕微鏡は教えてくれます。
これまで歯科医療におけるマイクロスコープは、口腔外科での腫瘍摘出後の再建手術で、移植弁(血管付きの皮膚)を口腔に移植する際に、顕微鏡下で口の中の血管と縫合する時に威力を発揮してきました。
今では、一般診療のなかの、根管治療(歯内療法)や保存治療(歯冠修復治療)や歯周治療に使われるようになりました。
根管治療は、一生に1度で済ませるべきで、道路工事のように、何度も掘り起こして同じ治療を繰り返すのは、如何なものか。
当院では、初回の治療で十分に時間をかけるため、1本の歯の根の治療は、殆どの場合が1回か2回、多いケースでも3回の通院で終了します。
最善を尽くしても100%の成功率はありません。100%に近づけるには、マイクロスコープの力を借りるのが近道です。
「アメリカの歯内療法専門医は、100%自分の診療にマイクロスコープを使っており、大学院での歯内療法の教育では、マイクロスコープの使用が標準として設定されている」と、米国・パシフィック大学歯内療法学講座のアラン H.グラスキン教授が、来日時に語っています。
全ての歯内療法にマイクロスコープが不可欠ではありません。しかし、複雑な形の根管の治療や、既に治療済みの根管の入り口がわかり難い歯の再治療を行う場合には、盲目的で勘に頼る治療より、細部まで見ながらの治療が良い結果が出るのは当然です。
さらに、もし問題が起こったとしても、マイクロエンド・サージェリー(顕微鏡下外科処置)にて殆ど問題を解決することが出来ます。
ご自分の歯で一生噛むことが出来るようにすることは、我々歯科医師でなければ出来ない最高に誇れる仕事です。保存治療、根管治療、歯周治療は、歯を残すための治療法です。これらの治療の成功率を高めることで、生きていく為の絶対条件である咀嚼機能を維持させ、QOL(生活の質)を落とすことなく、各人が生来持っているお口の役割を生涯に渡って保障し、豊かな人生に貢献します。
よく噛むことは、虫歯や歯周病、肥満、骨粗しょう症などの予防に、また、 唾液の分泌の促進による抗原や活性酸素の消去、食物の発がん物質の発がん性の抑制、 抗菌作用などに働きます。咀嚼とは、生きていくための基本動作なのです。
しかし、保存の見込みの全くない歯を意味もなく残すことも、正しい治療法とは言えません。歯科医としての医療技術の全てを尽くしても歯を残すことが出来ないときに、初めてインプラントを考えます。
インプラントが最初にあるのではなく、失われたお口の機能の回復、改善を目的として診査、診断し、ゴールに向かって総合的に判断して立てた治療計画の実現の為の治療法の一選択肢としてインプラントを捉えるべきだと思っています。
また、保存治療(詰めたり被せたりする)で歯を削りますが、貴重なエナメル質や象牙質は、最小限の削除量にするのが原則です。特に削った部分と詰め物との境界が、数ミクロンの誤差も生体にとっては許されません。微妙な部分をマイクロスコープで拡大して見ながら形成することで、より精度の高いフィットが得られます。
歯根のクラック(ひび割れ)の発見や歯周治療においても、 歯石や歯垢を取り残しなく除去する際も、 マイクロスコープは有用です。 歯周病で歯肉の切除を伴う手術に於いても、 術後の審美を考えてより細い糸を用いて縫合する際に、 マイクロスコープがアシストしてくれます。
※マイクロスコープを日常診療に使用していますが、別途料金はございません。
ペンシルベニア大学歯学部大学院歯内療法学科にて
マイクロエンド(顕微鏡下根管治療)の研修
2008年10月