長期安定について
長期間機能する治療のために
木造住宅の寿命は30年と専門家が言っていました。当院の長期症例はそれを越すものもあります。
口腔内は、適度な温度と水分と栄養があり、細菌を培養する培地と似た環境の中で咀嚼という人間が生きていくための最重要機能を担っています。歯には最大で自分の体重に近い力(咬合圧)が加わります。この不潔な環境の中で咀嚼を続ける歯やインプラントや義歯は、風雪に耐えている住宅と全く同じです。
~当院の長期経過症例は偶然の産物ではありません~

1本の歯が半永久的に機能するには、それなりの条件が揃うことが必要不可欠です。
先ず、以下の5条件が礎となります。
- 治療した歯が虫歯になりにくい精度の高い治療
- 完璧な歯内療法(根管治療)
- 生涯を通しての歯周病対策
- 義歯、ブリッジ、インプラント等の設計に当たっては、十分な咬合圧の均等な配分(力学)を考慮
- 顎の運動に調和した歯の形態の再現
【解説】
虫歯にさせないことは必須条件ですが、虫歯がなければ歯は一生抜けずに機能するかといえば疑問です。歯の表面が良くても、歯の中が無菌的な処理がなされていなければ、感染により根の先の骨の中に病巣を作ります。
これは、感染から全身を守るための生体の防御機能が働くからです。即、問題を起こすことは少ないのですが、何年か後に時には抜歯を余儀なくされることがあります。歯内療法(根管治療)の重要性がお分かりと思います。
では、虫歯もなく、根の先にも問題がなければ一生涯大丈夫かと問われれば、ノーです。歯周病で歯を支えてくれる骨が溶けると、歯はぐらぐらとなり咬むことが難しくなり、自然に抜けてしまいます。
更に一本一本の歯は、それぞれに役割分担があり歯に加わる力は、均等でなければなりません。
以上の条件が揃っていても、それだけでは不十分です。
上顎は頭骸骨に固定されていますが、下顎は身体の他の関節とは異なる3次元運動をします。筋肉(咀嚼筋)が脳の命令を受け、下顎を上下だけでなく前方、側方へと動かします。この動きに歯が調和しなければ、特に横揺れに弱い歯を支える組織(歯根膜、歯槽骨)にダメージが加わり骨の吸収が起こります。
上顎下顎に整然と並んだ歯が、咀嚼という重要な働きを円滑に生涯にわたり持続するためには、噛み合わせ(咬合)理論に則り、この世に二つとない、その人の顎の運動に調和した正確な歯の形や高さを再現させる必要があります。
左右前後均等な咬合圧とスムーズな顎の動きが、顎関節症の予防にもつながり長期機能を保証します。
~正しいお手入れと定期的なメインテナンス治療~
当院で行った治療の全てが、そのまま今日まで、長期(30年以上)に問題なく機能したとは思っていません。
長期経過症例は、口腔の諸条件が良好だったことや、日頃からの患者さんの歯周病予防に対する意識の高さによるところが大きいと思います。
これまでに、修理や再製を必要とした症例も多々有りました。それは、保証と引き換えに勉強をさせて頂きました。
長期の咀嚼機能と口腔の健康を維持させることが我々歯科医師の使命ではありますが、治療時間を端折っては、それを実現することは不可能です。
時間に余裕のない患者さんや治療後の定期検査が約束出来ない患者さんには、当院の診療スタイルは向いていないかもしれません。
歯科治療は理論に忠実に、こだわりを持って治療すること以外にないと信じています。
「長期症例一覧」に掲載したのは、現在も機能している長期経過症例の一部ですが、当院の診療姿勢の裏づけとして、患者様の了解を得て公開しています。