歯科治療とは
我々歯科医の究極の目的は、生涯を通してご自分の歯で食事が出来て健康長寿を出来るだけ長く維持出来るようにお手伝いすることです。その為に虫歯治療、歯周治療そして歯根治療を行ない、歯の保存を最優先に行ないます。不幸にして抜歯を余儀なくされた患者さんには、入れ歯やインプラント治療等があります。どんな高価な入れ歯やインプラントでも、その人の本来の噛み合わせに調和し違和感無く噛めなければ、何の価値もありません。ここで、初めて歯科医の技量が見抜かれます。
痛みもなく、しっかり噛めることが全身の健康に重要な役割を果たすことは、今では誰もが知っています。
28本の永久歯が、虫歯にも歯周病にもならなければ、歯科治療の必要はありません。
長く歯科診療を行なっていると、90歳を過ぎても歯が全て揃い、かくしゃくと定期健診に来院される方が何人も居られます。
目標は決まっています。
まず虫歯は出来るだけ早い時期に治療する。エナメル質、象牙質の虫歯が進行すると、次は歯の神経の病気になり冷たいもの熱いものに痛みを感じ更に進むと、何もしないでも痛み(自発痛)が出るようになります。神経が炎症を起こし化膿すると神経の除去(抜髄)の必要に迫られます。歯根の治療(根管治療)が完璧に行なえば何の問題もありません。
根管治療が不完全ですと、次は、根の先の病気が起こり、歯を支える骨の中に病巣が出来ます。
最悪の場合、抜歯せざるを得ない事もあります。(本HPの歯内療法を参照して下さい)
口腔内には、水分があり口腔内細菌があり栄養分(食べかす)と適度の温度が存在します。これは細菌培養器の中と同じです。
食事をすると食べかすが歯の表面に付着します。食べかすには、栄養分があるので口腔細菌は、そこに集まりそれを食べてて増殖します。要するに細菌が食べかすを分解し、それが歯の表面にべったりと付着した状態を歯垢=プラーク(1mg中に300種類の細菌が1億個が存在する)といい、長期にプラークが付着すると、唾液の中のカルシウムやリンが沈着して歯石になります。
生ごみを放置するとどうなるでしょうか。時間とともに細菌による腐敗が起こります。この生ごみが腐った状態は、口の中でも同じように起こると言うことです。腐敗物質が歯周ポケット内に停滞することで歯周病に罹ります。
虫歯は、砂糖が大好きな細菌(ミュータンス菌)によって分解されて出来た酸によって溶かされる化学反応で虫歯になります。子供の頃、理科の授業で大理石に塩酸をかけると溶けることを習ったと思います。虫歯菌が歯を食べるのではありません。
歯磨きの必要性がご理解できると思います。
歯周ポケットに存在する歯石(細菌のサンゴ礁の様なもの)が歯周ポケットの内面を傷つけ、その傷口から歯周病菌が作った毒素や細菌が入り込もうとします。その時、生体の防御反応として、急性炎症(戦争)を引き起こし全身への影響を抑えますが、長期化(慢性炎症)すると、次に歯肉の下にある歯を支える骨への感染が起こり、これは最も回避しなければいけないため、歯肉炎症部から距離をおくため破骨細胞を出しその骨を自ら溶かします。骨の表面は1mmの靭帯でガードされていて感染しませんが、時間の経過とともに歯が動揺し放置すれば自然に抜けます。歯周病菌が骨を食べるのではありません。
骨があるうちに対応すれば大丈夫です。(本HPの歯周病についてを参照)
歯周病は、日頃からの歯垢清掃(歯ブラシ・デンタルフロス・歯間ブラシ等々)で、健康歯肉を維持することが出来ますが、4mm以上の歯周ポケットでは完璧とは言えません。
その為には、トレーニングを積んだ専門の歯科衛生士による器具を用いての歯垢の除去その他で虫歯や歯周病を予防する機械的な歯面清掃PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning) が不可欠です。3~4ヶ月に一回(保険適用)
歯の表面やポケット内にはバイオフィルム(プラークが進化した歯周病菌その他の細菌の集合体)が食後48時間で作られ虫歯・歯周病の原因となっています。これは、台所の排水溝のぬめりの様なもので歯ブラシでは除去出来ません。
上記PMTCで取り除くことで、次に出来るまでの時間を稼ぐことが出来ます。
歯の悪い人は、早い時点で悪い歯だけを治すのではなく、歯・歯肉・噛み合わせを含めた一口腔単位での治療を行ない、口腔機能をリセットして、身に付けた正しい歯磨きを励行することと定期的なメインテナンス治療を忘れない事で、何の問題もなく美味しく食事が出来る豊かな人生が保障されます。当院に何十年もメインテナンス治療で通院されている患者様の症例も掲載してあります。(本HPの健康な歯肉[スティップリング]を参照)