誇大広告・価格破壊がもたらす危険

投稿者: | 2010年10月8日
第5回口腔インプラント専門医臨床技術向上講習会
(平成22年7月17・18日/東京歯科大学血脇会館)
これは、インプラントの専門医受験資格取得および専門医資格更新(5年毎)に、受講が義務付けられている教育講座の一つで、日本口腔インプラント学会が主催し全国から200人ほどが出席しました。
日本口腔インプラント学会の基本理念である「適切な診断および安全・安心のインプラント外科埋入手術」を柱とした関連演題のシンポジウムでした。
インプラントは、その歯科技術の進歩と共に、世界から高い評価を得てきましたが、ここにきて、マスコミからバッシングを受けていることは、周知の事実です。このことは真面目に取り組んできた日本口腔インプラント学会や歯科医にとって実に悲しいことです。
学会としては、反省点も含めて国民から理解が得られるインプラントを目指して会員と共に現時点での世界の歯科事情、研究論文、会員からの症例発表、講演会を通して真摯にインプラント治療に取り組んでいます。
その、教育講演のトピックは、患者集めを目的としたインプラント関係の雑誌の氾濫や高額な掲載料を支払っての考えられない誇大広告や価格破壊で問題が発生している実態等についてでした。
本来、研究論文は、大学や学会の厳しい審査をパスして初めて世に出るものです。当然、医学雑誌は、その道の学者や専門医が自らの永年の研究業績と関連論文を参考に著者の見解をまとめ巻末に参考にした文献を明示して、主に医師、時には国民を対象に執筆するものです。
一方、患者さんを対象にした歯科関連雑誌は、学問的研究実績が全くなくても誰でも出版することが可能で、内容についての審査は一切ないのが現状です。首を傾げたくなるような内容であっても、野放しです。
時々、我々歯科医院に大手新聞社系列の週刊誌から別冊の広告企画の案内と掲載依頼がきます。
広告内容が真実であるか否かは問題ではありません。ただ、広告料さえ支払えば、実力に関係なく誰でも名医や専門医や信頼できる歯科医になれます。先ごろ話題になったインプラント使いまわしも社会問題に発展しましたが、その陰に、再三にわたる豊橋市歯科医師会の中止要請を無視して、度を越した広告を掲載し続けた新聞社の存在があります。モラルのない収益至上主義のメディアや関係出版業界に歯科界を批判できる資格があるのか、疑問です。全国の大部分の地道な歯科医は、じっと耐えているのが実情です。これこそ社会問題と思います。
新規開業の場合は別として、永年その地域で国民医療に誠実に取り組んでいれば、評判は口コミで広がり殆どの歯科医院は宣伝に頼る必要はありません。歯科に限らず私の知る名医達が、広告を出し続けている話を聞いたことがありません。
いみじくも、日本のインプラント界をリードしている東京医科歯科大学の春日井教授の話の中に“インプラントにおける最大のリスクファクターは歯科医自身”とありました。
心に留めたい言葉です。
第5回口腔インプラント専門医臨床技術向上講習会(1) 第5回口腔インプラント専門医臨床技術向上講習会(2)
第5回口腔インプラント専門医臨床技術向上講習会(3) 第5回口腔インプラント専門医臨床技術向上講習会(4)


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横浜市青葉区青葉台の川原歯科医院