歯科医師と歯科技工士が読む補綴専門誌QDT(2020年11月号)に掲載された症例

投稿者: | 2021年1月30日
補綴専門誌QDT(2020年11月号)  
掲載された症例  
2011年初診の46歳女性。歯の変色も含め審美的改善を目的に来院。「20代で矯正治療を行ったが、治療が進むにつれ前歯が見えなくなり、噛み合わせの高さも低くなった」とのこと。 再矯正を行った後、表情に重要な役割を果たす噛み合の高さもベストと思われる状態に改善し、歯根の露出部分には結合組織移植術を行い上下の歯肉レベルを整え、仮歯で約1年経過後、経過良好と判断し2020年に完成した症例です。

噛み合わせの再構築をともなう包括的歯科治療において、歯科医師が検査・診断を経て立案した治療計画と最終目標を歯科技工士と共有することは必要不可欠です。

川原歯科医院 院長 川原 淳

 

論文の要約

本論文「The full mouth reconstruction update 2020」は、間中道郎氏・川原淳氏・武川泰久氏による症例報告であり、咬合再構成を必要とする患者に対して、矯正治療や外科処置を含む包括的なアプローチを行った2症例が紹介されています。本論文では、最小限の侵襲(MI:Minimal Intervention)というコンセプトを軸に、審美性と機能性の両立を目指した治療戦略が展開されています。
 
症例の一つでは、過去に矯正治療を受けた患者が、加齢や咬合の変化により前歯の審美性と咬合高径の低下を訴えて来院しました。診査・診断の結果、再矯正と歯周外科処置(結合組織移植術)を行い、歯肉レベルの調整と咬合高径の改善を図りました。仮歯による長期的な経過観察を経て、最終補綴物としてラミネートベニアやアディショナルベニアを用いた審美修復が施されました。

もう一つの症例では、咬合崩壊が進行した患者に対し、咬合平面の再構築と咀嚼機能の回復を目的に、包括的な治療計画が立案されました。歯科医師による精密な診査と治療方針の共有、歯科技工士による補綴設計と技工物製作の連携が、治療の予知性と患者満足度の向上に寄与したと報告されています。

本論文は、咬合再構成を伴う全顎的治療において、MIコンセプトを取り入れながらも、必要に応じて矯正・外科・補綴の各分野を統合することで、長期的な安定性と高い審美性を実現できることを示しています。また、歯科医師と歯科技工士が治療目標を共有し、密に連携することの重要性が強調されています。包括的治療を成功に導くための臨床的・技術的な指針として、非常に示唆に富んだ内容となっています。