





この掲載記事について
この記事で一番伝えたかったのは、「有病者の歯科医療に携わる以上、何かが起こるかもしれないと常に考えて備える姿勢が必要だ」ということです。歯科治療は一見すると局所的な処置に見えますが、患者さんの全身状態と密接に関わっています。高血圧や糖尿病、心疾患などを抱える方が増えている今、治療中に予期せぬ事態が起こる可能性は決して低くありません。だからこそ、私たち歯科医師は「大丈夫だろう」と楽観するのではなく、「もしかしたら起こるかもしれない」と想定して準備をしておくべきなのです。そのためには、まず患者さんの全身状態を正しく把握することが欠かせません。問診で既往歴や服薬状況を丁寧に確認し、必要なら主治医と連携して情報を共有する。治療計画を立てる際には、歯だけでなく全身のリスクを考慮する。これが基本です。そして、もし急変が起きたときに備えて、救急蘇生法や薬剤の使い方を身につけておくことも重要です。診療室には必要な器具や薬品を常備し、スタッフ全員が緊急時の対応を理解している状態を作っておく。こうした準備が、患者さんの命を守ることにつながります。
さらに大切なのは、知識を常に更新し続ける姿勢です。医学は日々進歩していますから、昨日までの常識が今日には変わっていることもあります。最新のガイドラインや研究成果を学び続けることで、予測不能な事態にも冷静に対応できる力が養われます。私は「備え」というのは単なる器具や薬品の準備だけではなく、知識と心構えの積み重ねだと思っています。
結局のところ、有病者歯科医療において私たちが目指すべきは「安全を最優先にした診療」です。技術や経験ももちろん大切ですが、それ以上に「何かが起こるかもしれない」と常に意識し、最大限の知識を吸収して備える姿勢こそが、患者さんに安心を届ける基盤になります。この記事を通じて、同じ現場に立つ歯科医師の皆さんにその思いを共有したかったのです。